シャンパンの造り手は、大きく3つの業態にわけることができます。そのなかの1つをレコルタン・マニピュランといい、自分の畑で栽培したブドウを使い、自分で醸造するドメーヌのことを指します。誰もが耳にしたことのある大手シャンパン・メーカーとは違い、その味わいは造り手の信念やテロワールの個性に満ちています。今回は、コート・デ・ブランのレコルタン・マニピュラン、フランク・ボンヴィルの魅力に迫ります。
― フランク・ボンヴィルの歴史を簡単に教えてください。
オリヴィエ(以下 O):最初に、フランク・ボンヴィルは、アヴィズ村にドメーヌを構える自家栽培・自家醸造のレコルタン・マニピュラン(RM)です。ブドウ栽培・醸造家としては4代目にあたりますが、フランク・ボンヴィルというドメーヌ名になってからは、現当主の私で3代目です。祖父のフランク・ボンヴィルがドメーヌを創業したのが1930年。4ヘクタールの畑からスタートし、今では19ヘクタールの畑を所有するまでになりました。
私の経歴をお話ししますと、89年~95年の6年間は、専門学校や大学で農業やシャンパンの法律、経済、そして醸造の勉学に勤しみました。95年からシャンパーニュの組織CIVC(シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会)にて、圧搾の担当として働きました。翌96年、ドメーヌでの仕事をスタートさせました。この年は本当に素晴らしいミレジムでしたので、スタートに相応しい一年となりました。
― では、あなたのドメーヌのある、コート・デ・ブランの特徴は?
O:コート・デ・ブラン「白い丘」という名前の通り、白亜の石灰質土壌から構成されています。ちなみにシャンパーニュの17のグラン・クリュは、すべて白亜岩の上にあります。この地質は、ブルゴーニュ地方から続いているものです。シャンパンはメゾンやブランド名が評価の基準となって選ばれる場合も多いのですが、シャンパーニュのグラン・クリュもブルゴーニュと同じ意味を持ち、優れたテロワールと高い品質の証といえます。
畑の斜面は、非常に日当りの良い東向きです。コート・デ・ブランの東向きの斜面には、ほぼすべてシャルドネが植わっています。ミネラルが豊富な石灰質は、辛口の白ワインとなるシャルドネ種の栽培に適していて、この土壌が香りや酸味を増す作用があるといわれています。またシャンパーニュ地方は、寒冷な気候のためブドウの栽培が難しいとされていますが、石灰質の土壌は排水能力に優れていて、葡萄が育ちやすく完熟が期待できるのです。
― 自社所有の畑のそれぞれの個性はありますか?
O:私の所有する畑は、アヴィズ、オジェ、クラマン、メニィルの4つの村のグラン・クリュにあります。私のドメーヌでは、パーセル(畑の区画)ごとに醸造を行っているわけではありませんので、一般的に言われているテロワールの個性をお話ししますね。クラマンは、爽やかではつらつとしていてかつ品位がある、アヴィズはミネラリティとコクがあり濃密な果実味、オジェは豊満でおおらかな風味、メニルは強烈なミネラルティと酸が特徴といわれます。
― レコルタン・マニピュランならではの特性はありますか。
O:自社畑だけでなく、多くの農家からブドウを買い付けて自社ブランドとして醸造・販売するのがネゴシアン・マニピュラン(NM)です。ネゴシアン・マニピュランのシャンパンは、ビンテージごとの差が少なく、均一的な味わいが特徴ともいえます。
それに対して、レコルタン・マニピュランである私のドメーヌは、ドメーヌを構えるアヴィズ村とその周辺約5km圏内に畑を所有しています。自社の所有する畑ですから状況に応じてスムーズな対応が可能ですし、テロワールを知り尽くしているため、シャンパンの味わいにもその個性を表現しやすいというメリットがあります。私の造るシャンパンは、コート・デ・ブランのテロワールとシャルドネの特徴や個性が宿るブラン・ド・ブランといえます。
またネゴシアン・マニピュランの大手メゾンは、広告費や設備投資が多額でシャンパンの価格に反映されますが、私たちレコルタン・マニピュランは広告費や営業コストが概ね反映されません。そのため商品の価格も比較的安価に、クオリティに見合った価格でご提供できるのです。