こんにちは。ナチュラルワイン教室を担当している遠矢です。
2025年のスペイン生産者訪問記、第2弾の後編をお届けします。

前編記事はこちら

2025年現在のラス・ペドレラスは、6haの自社畑と1haの借り畑を管理しています。
そのすべてをバルバラひとりで面倒見ていて、特に剪定など樹の将来を決める作業は、絶対に自分がやると決めているそうです。

さらに前編で見た畑が、コマンドG(2018年『ワイン・アドヴォケイト』誌で、ガルナッチャ単品種として初めて100点を獲得したワイナリー)の畑とも隣接していることで、その整った美しい畑をお手本としながら仕事ができているということが、とても幸運なことでもあります。強いこだわりとともに、しなやかな学ぶ姿勢も感じることができました。

【ナバレビスカの畑】

鬱蒼とした森の中の畑を離れ、車でさらに山を登り隣村ナバレビスカ(Navarrevisca)へ向かいます。
コマンドGの名声を受けてグレゾスの畑の価格が高騰した頃、畑探しに苦心していたバルバラたちは、グスマン(バルバラのパートナー)のお父さんの「ナバレビスカの山の斜面に土地を持っていたはず」という言葉を頼りにこの場所にたどり着きました。

標高1,200mの畑は、かつて牛の飼育用のライ麦を栽培していた場所で、2022年から植樹をスタートしました。標高の高さに加え、北向きの斜面。「グレゾスで最も厳しい環境だ」とバルバラは言います。気候変動がなければブドウ栽培には適さないはずだった環境。ここをブドウ畑にすることだけでも相当な挑戦です。

澄んだ空気の静けさに時折響く鳥の声、眼前に広がる山脈と空、遠くに小さく見える街。
まわりには誰もいない広々としたこの畑で、黙々と苗を植えていた様を想像すると、フレデリック・バックの『木を植えた男』が重なりました。

この畑で話すバルバラはひときわ誇らしげで、強い意志を感じさせました。
「私とグスマンは、ラス・ペドレラスが周りのどのワイナリーにも劣らない存在になれると常に信じてきた。資金は少ない。資源も限られている。でも私たちは誰より懸命に働くし、誰よりも勇敢。それが私たちのやり方で、地図に自分たちを刻み付ける方法なんだ。」

▲水晶が混じる花崗岩の土壌。
アニマスと同じルーツのガルナッチャで、2026〜27ヴィンテージからワインができるかも

【ラス・ペドレラスのこれから】

スタートから5年。畑を取得し、ワイナリーとして自立することに集中してきたバルバラ。ここからは一度立ち止まって、今あるものすべてを改善していく段階に入ったと考えています。

「来年には土壌調査を始める。いつも観察はしているけれど、やっぱり土の中のことはわからない。今はすべての畑に標準的な作業をしているけれど、ちゃんとした情報を得て、各土壌に適した精密な仕事の仕方を模索していくつもり。」

バルバラのこだわりは、固執ではなく、今必要だと感じることを集中して貫く意志のように感じました。

そして、その姿勢は自身のワインを世界に広めていくことにも向いています。
ヨーロッパ各地やアメリカを周り、韓国や香港、そしていずれは日本への旅も視野に入れ、積極的にワインを扱う人との関わりを持とうとしています。

「私たちのワインを知ってもらうための旅はとても大切。実際に顔を合わせて会話をすることで、ソムリエや直接ワインを買ってくれる人たちは、本当に私たちと繋がってくれる。」

そう言ってくれるバルバラを胸を張って迎えられるようにと思うと、今も身が引き締まる思いがします。

【醸造所からラ・クエレンシアへ】

畑の訪問を終え、醸造所へ戻りタンクからの試飲をしたのですが、ここでの一言も印象的でした。

「このワインは、30くらいの区画のブドウを別々に収穫して、別々に仕込んだものを最近ブレンドしたばかり。だから、本当はあまり試飲したくない。ワインが結合されていないのが気になって、眠れなくなってしまう。」

このワインが特に、ということではあったと思うのですが、一度気になると頭から離れなくなってしまうようなところもあるのかもしれません。

最後は、パートナーのグスマンの経営するレストラン「ラ・クエレンシア(La Querencia)」で試飲とランチタイムです。
「クエレンシア」は闘牛用語で「動物が家へ帰りたいと感じる気持ち」のことで、グスマンのお父さんの家をレストランにしたので、この名前がつけられました。

バルバラはこのあとにも来客が控えているそうで、慌ただしくしていましたが、先ほど醸造所でも試飲した30区画のブドウを使ったワイン「バリオ・デ・ロス・アロユエロス(Barrio de Los Arroyuelos)」の2023ヴィンテージについて話してくれました。

「私はアッサンブラージュの造り手だと思う。グレドスでは単一畑志向が強いけど、私はブレンドすることで何かより良いものができると信じてる。アロユエロスがそれなんだ。」

「アロユエロス2023は私たちにとって本当に大きかった。自分たちの道を見つけられた気がする。ワインが売れてなくなるのが悲しいくらいに大好き。そして、すべてのワインにとっても2023年は転換点になった。ワインのスタイルが本当に定まって、『これがラス・ペドレラスだ』『グレドスを表すものだ』と語れると思ったんだ。」

             ▲Barrio de Los Arroyuelos バリオ・デ・ロス・アロユエロス

ネッビオーロのように凝縮した黒く鮮やかなエキスとなめらかな質感がとても素晴らしく、ワインが自ら語りかけてくれるような、寄り添ってくれるような親しみやすさと上品さを感じる、と伝えたかったのですが、英語力が及ばず。
「ありがとう。その反応は言葉より雄弁だよ」と言ってくれたのですが、自分の感動くらいは言葉にできるようにしておきたいものでした。

2回に渡ってご紹介したラス・ペドレラス訪問記、いかがだったでしょうか。
隔絶されたような環境でずっと続いてきたブドウとワインの系譜を確かに繋ぎつつ、バルバラ自身の意志を強く映し出すようなワインが生まれています。
“勇敢”という言葉がありましたが、信念や覚悟と言われるような、揺るがずにあろうとするさまに、私は強く惹きつけられたように思います。
それを受け取ったひとりとして、みなさんにしっかりと紹介することでバルバラの意志に応えたいと思います。ぜひ、ラス・ペドレラスを味わってみてください。

さて最後は、また食事をご紹介して終わろうと思います。
また次の訪問記でお会いしましょう。

▲地元の野菜と揚げた半熟の目玉焼きを絡めて食べる

▲この地方名産の牛の骨付き肉、すごいボリュームで食べきれませんでした

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