こんにちは!ディオニー東日本営業チーム村松です。
2025年2月に訪問したフランスのワイナリー「Domaine 47N3E(ドメーヌ・キャホンセット・エヌ・トワ・ウ)」をご紹介します。
ブルゴーニュを代表する銘醸地Chablis(シャブリ)で、テロワールとミレジム(生産年)の個性を表現することを指針にしている当社唯一のシャブリ生産者、キャホンセット・エヌ・トワ・ウを訪問してきました。
当主であるGuillaume Michaut(ギヨーム・ミショー)はブドウ栽培家の家に生まれます。10年程家族のところで働いていましたが、2018年に自らのドメーヌを立ち上げます。現在は祖父が植えた3つの畑を受け継ぎ、そこで採れたブドウで自らのポリシー&哲学である「自然との調和」をモットーにワインを造っています。
ドメーヌ名はシャブリの緯度経度を表しており、その名前からも彼がどれだけ“シャブリ”と場所にこだわっているかが読み取れます。そのためにカーヴでの作業においては、極力何も添加しないことを目指しており、現在ブドウ栽培はオーガニック。また、薬草で散布剤(ティザン)も自作しています。

サンセールから2時間ほど北東に車を走らせ着いた先が、現在彼が拠点としている事務所兼ストックルームです。当初のアポイントの時間よりも1時間ほど遅れてしまいましたが、快く私たちを受け入れてくれました。入るとそこは無駄が一切ない整理整頓されたオフィス。決して大きい部屋ではないですが、とても洗練されており、気が引き締まるような雰囲気でした。私たちが訪問するのでこんなに整っているのかと一瞬、変に勘ぐってしまったのですが、話し始めると彼の性格や実直な雰囲気が裏付けられました。一つ一つ言葉を選びながら話すその姿からは、彼らの造るワインのこと、貫きたいスタイルを、限られた時間の中で私たちに伝えきるという強い意志を感じました。


現在、彼らは同じシャブリ地区の生産者ドメーヌ・ド・ランクロの醸造施設を間借りしてワインを造っています。この事務所兼ストックルームも間借りで、ここで瓶詰めしたワインの保管や発送を行っています。ワインはもちろん自分たちのブドウだけで、醸造から熟成までギヨームがすべて行います。
自分の醸造施設や拠点となる場所を探してはいるが、特に今の醸造施設の設備が良すぎて探すのが難しく、土地代も高いのでなかなか見つけるのが難しいそうです。どんな設備なのか気になったので事務所でのテイスティングの後にランクロの醸造施設に連れていってもらいましたが、想像を超える環境でした。その前に彼が持つ畑やキュヴェの事をご紹介したいと思います。
現在、所有する畑は約8ha。プティ・シャブリ、シャブリ、プルミエ・クリュ・ボーロワ、プルミエ・クリュ・コート・ド・サヴァンと4つのアペラシオンがあります。4つの中で最も標高が高いプティ・シャブリは丘の上でフレッシュ感を生み出すとの事ですが、決定的に違うのは土壌だと言います。プティ・シャブリの地質はポートランディアン期(キンメリジャン期よりも1500万年程新しく、地層からの海面が高かった)の石灰土壌で、粘土石灰の中でも粘土が多いのでフレッシュかつ、親しみやすい味わいが生まれます。
それに比べて、シャブリやプルミエ・クリュはキンメリジャン期(この期の地層は海面が低かったために様々な流入物が混ざりあった)の石灰土壌で、粘土層が浅く、すぐにブドウの根が石灰層と当たるのでよりミネラリーなテクスチャーをもたらすと言います。2006年から2010年にかけて自ら植樹したシャブリと、2011年から2021年にかけて植樹したプティ・シャブリは、家族のところで働いていた時代に父親から譲ってもらい、コツコツと植えていきました。シャブリの初ミレジムはドメーヌを立ち上げた2018年、プティ・シャブリは2022年です。

ギヨームはプルミエ・クリュを2つ造っていますが、どちらも同じ丘のボーロワにあり、地続きで隣同士になっています。明確に区画が分かれているわけではないけれど、彼の中で畑の線引きをし、ボーロワとコート・ド・サヴァンに分けて造っています。ただ、ボーロワを持つ生産者でコート・ド・サヴァンと名乗ったワインを造るのは彼だけで、理由はわからないがみんな名乗らないそうです。
その理由もあって、コート・ド・サヴァンには希少性があると捉え、100%バリックでワインにストラクチャー(彼は背骨と表現しました)を与え、長熟に向くようにポテンシャルのあるワインを造っています。
このプルミエ・クリュの畑は1980年に家族が植樹した区画で、初収穫は1983年。もちろんキンメリジャン期の粘土石灰ですがシャブリよりも粘土層が浅く、ブドウの根が石灰層に当たりやすく、より多くのミネラル分を吸収し、土壌から来る力強さがあります。なので、ギヨームはプルミエ・クリュはクラシックスタイルのシャブリと捉えていて、プティ・シャブリ、シャブリはより自分らしさを表現できるワインだと言います。


彼にはもう一つ大事にしている2022年初ミレジムのキュヴェがあります。
それが「Chablis Cairn(シャブリ・ケルン)」。
彼のシャブリはすべて自ら植樹した畑からでしたが、シャブリ・ケルンは、家族代々の畑で2022年に受け継いだ畑であり、祖父が植えた樹齢50年の区画と、父親が植えた樹齢25年の2つの区画から造られます。樹齢25年のブドウはステンレスタンクで、樹齢50年のブドウは樽で熟成まで別々で造られ、どちらも14ヵ月熟成後、1:1でブレンドされます。
ケルンは、写真のように積み上げられた石を指し、登山用語では「目標」や「目印」の意味があります。ワインの味わいを構成するすべての要素が絶妙なバランスで保たれていることや、彼らのシグニチャーキュヴェの意味合いも込めて“ケルン”と名付けたとのことです。
◆◆◆
さて、次回、後半は間借りしている醸造施設へ!