こんにちは!ディオニー東日本営業チーム村松です!
2025年1月に訪問したフランスのワイナリー「Domaine Julien Mayer(ドメーヌ・ジュリアン・メイエー)」をご紹介します。
いざ、アルザスへ
今回のフランス生産者訪問はアルザスからスタートして時計回りに旅を進めていきました。最初の訪問エリアはディオニーの人気生産者が集まっているアルザスから!
アルザス地方はフランス北東部、ドイツとの国境付近に位置するワイン生産地で、南北に約170 ㎞と細長く、西側には美しいヴォ―ジュ山脈が連なっていると聞いていましたが、残念ながら周りを見渡しても霧まみれ…。結局アルザス滞在中は山脈の一角も見ることはできませんでした。
ドライバーも務めるバイヤーは「晴れていたらキレイなんやけどなぁ、残念やなぁ」と一言。私は外の霧だらけの変化の無い景色を見て、悲しさで助手席で撃沈しておりました。
ストラスブールから車で40分ほど南に車を走らせ、ノータルテンという町の「ジュリアン・メイエー」を目指します。到着したのは午後3時頃。外は日が落ち始め、とても寒かったです。
パトリックワールド全開!
まず、彼らの自社畑であるリューディ(ブルゴーニュ地方でいう1級畑のような畑の呼称)の「ツェルベルグ」「グリッテルマット」と、グラン・クリュ(特級畑)の「ムエンシュベルグ」について現当主のパトリック・メイエーから話を聞きました。少し難しい話ですがお付き合いいただければ幸いです。
グリッテルマットとムエンシュベルグは同じ丘にあり、畑の上部がムエンシュベルグ、下部がグリッテルマットという位置にあります。
グランクリュであるムエンシュベルグのワインは、昔よりも本領発揮するまでに時間がかかるようで、最低2年間熟成するようにしているそうです。その理由は地層にあるとのこと。
「そもそも物質とは、炭素、窒素、水素などの目に見えない元素と光、熱で生成されている。例えば、ブドウの葉や実も同じように形づくられ、秋冬にエネルギーを溜める。それが冬になると土に還り、春になるとまた生成されるという1年間のサイクルがある。」
「ふたつの地層には共通して水晶が含まれている。
それは地中の冷たいところでしか生成されず、秋冬にエネルギーを貯める。地中の冷たい世界で生まれた水晶は、秋冬に溜めたエネルギーを開かせるために春の暖かい経験が2回必要で、それが『最低2年の熟成』につながっている」のだそうです。

「人間も寒い時に縮こまる。ワインも暖かくなると開いて宇宙からのエネルギーを得られる。その宇宙との交信を2回させないといけない(編集部注:つまり、春夏が2回過ぎるまで熟成させる必要がある)のがムエンシュベルグやグリッテルマット」とのことでした。
それに比べ、水晶を含まないツェルベルグはもっと親しみやすくフレンドリーなキャラクターになるそうです。
実験のようなテイスティング
醸造所の中に入ると、左右にタンクや樽が並んでいました。決して大きい醸造所ではないですが、卵型のセメントタンクや樽、ステンレスタンクが綺麗に並んでいます。冬ということもあり一層寒い…。


彼らのカジュアルキュヴェのベースとなる、シルヴァネール100%をタンクから試飲したあと、その場でピノ・ブランとリースリングをアッサンブラージュし、今年の「アラヴィ」や「メール・エ・コキアージュ」のイメージをさせてくれました。

その後、各キュヴェの暑かった2023年と冷涼だった2024年を比較しながら試飲させてもらいました。
その風貌も相まって、フラスコのようなものをもって醸造所を歩き回る姿はまるで大物科学者です。

メイエー家のいま
パトリックと一緒に試飲をしたのは次女のエマ(キュヴェ「ブル・デマ」)と三女のルイーズ(キュヴェ「ルル」)。スタイリッシュな姉妹です。

この2人は既に醸造、畑にも少しずつ関わっており、パトリックはテクニカルなことは彼女たちに聞いてくれと、冗談交じりに言っていました(笑)2022年から収穫も一緒にやっているそうです。
そして、なんと長女のステファニー(キュヴェ「ファニー・エリザベス」)にお子さんが生まれました!しかも、女性に囲まれていたパトリック待望の男の子。名前は聞きそびれましたが彼の名前が入ったキュヴェもそのうち入荷するかもしれません!(1回造ったようですが、上手くいかなったそうです)

30年のビオディナミを経て
2024ヴィンテージに関して、収量は減ったけれど病気によるものではなく、花が咲く量が多くなかったのと、咲いても花振るいを起こしたのが大きい原因だそうです。「花は星を見たいので、雨が多かったから散っちゃったのかもね」とロマンティックに語っていました。
「アルコールのポテンシャル的に9.5〜10.5%と低めだったけど、ブドウを食べた時にとても熟した感じがしたから収穫した。昔の10.5%は青っぽく、飲めたもんじゃなかったけど、温暖化の影響で低いアルコール度数でも熟した味わいを感じられるのは、環境の変化としてポジティブに考えているんだ。2024年は雨が多かったが、雨水は土の中のミネラルを運んでくれる。もちろん、太陽のエネルギーが活きていたらの話だけどね 」と、まさにパトリック節。
一般的に、地球温暖化に適応するため収穫が早くなっていることが挙げられますが、パトリックが一番大事にしていることは、ブドウに地球のエネルギーが伝わっていること。実際にブドウを食べてみてミネラルを感じ、味わいの余韻を長く感じられたら収穫のサインです。
また、収量に関して2023年は62hl/haと豊作、2024年は38hl/ha、40〜45hl/haが平均くらいなので、ちょっと少ないものの大打撃ではないとのこと。
その理由として、どんどん畑が美しくなってきているから収量も増えてきていて、以前に比べても、ここ数年は畑からもエネルギーを感じ、土地が肥沃になってきているからだそうです。
「例えば他のアルザスの生産者は、畑の10〜40%くらいはベト病の被害を受けたが、広く有機農法とビオディナミを理解することで病気にかかりにくくなった。
30年間ビオディナミをやってきて、ブドウがパワーを持ってきている。おかげで、ここ数年はヴィンテージや異常気象の影響に左右されないようになってきたんだ。だからこそ、僕のワインは心で感じてほしい」とやさしい声で伝えてくれました。
パトリックとテイスティングをさせてもらって、畑に手をかけ育てていくことの意味を彼のワインを通して感じました。また、そう感じられることが彼にファンが多い一番の理由なんだと思い知らされました。
今回の訪問で、自然を深く理解し、幾度とない変化を受け入れる彼だからこそ、エネルギーの宿ったワインを生むのだと感じました。
