こんにちは!ディオニーマガジン編集部です。
前編としてお送りした村松による生産者訪問記 Domaine47N3Eの後編をお届けします。(前回の記事はこちら)いきなり登場するのはわが社のバイヤー!
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続いてドメーヌ・ド・ランクロの間借りをしている醸造施設に場所を移動します。
車で東に進むと4分ほどで着きます。広い敷地の端にある倉庫のような醸造施設に入ると、中には巨大なベルトコンベアがついたプレス機があります。
彼は醸造の段階で何もしたくないので、本当にいい状態でブドウを収穫し、さらにプレスする前の選果に一番気を遣い、自らが「食べたくない!」と思う実は除去するそうです。
また2024年からブドウを分析にかけて、どんな野生酵母がいるのかということをチェックしています。

地下に降りるとそこにはタンクが並んでいて、SF映画のワンシーンのような最先端技術を感じる環境でした。タンク1つ1つはまるで新品のようにきれいに清掃されており、床にも汚れの見えないとても清潔感のあるフロアです。


1階で搾ったジュースは重力を利用してストレスなくタンクに入ります。この設備も強みのひとつだと説明してくれました。間借りといえど環境が良すぎるということをダイレクトに感じることが出来ました。
今回のフランス出張では他の生産者の醸造施設も見学しましたが、広さ、清潔感、設備などトップクラスだと感じました。

最後に2024年のワインが樽に入っていたので見せてもらいました。
収量は90%減、この減り幅もトップクラスでした。4つのキュヴェ併せて10樽程度…。そのためすべて樽で熟成させています。ここまで少ないと試飲させてほしいなんてとてもじゃないが言えません…。コート・ド・サヴァンに関してはたったの1樽。そのため、2024年はボーロワに混ぜる可能性が高いとのことです。収量減の要因としては遅霜や特に雨、オーガニック栽培にとっては本当に厳しい年でした。彼はより厳しく選果する生産者なのでもろに打撃を受けていると感じました。
収量を確保するために自作のオーガニック散布剤を40回程度撒くのですが、2024年は51回も撒く必要があったそうです。だから、この気候でもある程度の収量で生き残ったブドウは(他所の畑の)ケミカルなものだけと彼は小さい声で言いました。
このセラーは人工的に温度管理されているセラーなので、温度管理が必要ない洞窟セラーをメインに探しているそうです。ただ、小規模でまだ実績の少ない生産者や会社は、銀行からお金を借りづらいため、融資を受けるにはある程度収量を増やして、多くのワインを売って実績を作った方が良いというところもあるそうです。けれど、彼はそのために自分の造りたいスタイルを崩すつもりは一切ないと力強く言いました。「私はいいシャブリを造るのではなく、個性が表現されたシャブリを造りたい」と最後に言った言葉がとても印象に残っています。
彼が造るワインはどれも彼の実直なキャラクターが表現されている、まっすぐでクリアなワインたちですが、それは決して市場が求めているスタイルに寄せているわけではありません。彼が大事にしているミレジムの特徴や、代々受け継いできた畑が持つテロワールを表現することにフォーカスした結果がワインに詰まっているということを、感じていただけたら嬉しいです。
いつか彼が納得いく醸造施設を手にし、そこで造られたワインを皆様にご紹介させていただくことが待ち遠しいです。
