こんにちは、東日本営業チーム大久保です。
2026年1月20日から約2週間フランス全土を訪問しました。その中で印象に残った造り手をご紹介します。

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ルーションの南端、スペイン国境にほど近いバニュルスの生産者、イタリア出身のマニュエル・ディ・ヴェッキ・スタラズ。ワイナリー名は「Vineyer de la Ruca(ヴィネヤー・ド・ラ・ルカ)」。

彼と会うまで、写真でしか見たことがなく、絵にかいたようなイタリア人なんだろうなという勝手な想像があり、いつも明るくて、陽気で細かいことは気にしないハッピースタイルなんだろうなと思っていました。
実際に会うと、ここまで想像通りの人いるか?というぐらい陽気で明るい(笑)。ワインにもそのカラーが出ています。
モンペリエで醸造を学び、その後フランス各地で研鑽を積みながら、ビオディナミのコンサルタントとしても活動してきました。ナチュラルワインの思想を深く理解し、それを実践に落とし込むことに長けた存在といえます。

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訪問は、1月25日の日曜日。到着したのは夜の6時半ごろで、太陽が完全に落ち、夜の始まりのタイミングでした。

▲ヌフカーブの裏口

醸造所に到着すると、マニュエルと当社パートナーでもあるブルノ・デュシェンとレ・ザーヌ・エーレのキッコーが出迎えてくれました。

楽しいディナーの様子は最後にご紹介するとして、まずはバニュルスと彼のワイン造りについて触れておきます。

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ペルピニャンから海沿いに車を走らせること約40〜50分。次第に街が少なくなり、乾いた岩山と海だけの景色に変わっていきます。フランスの端っこ、「ここまで来たか」と感じるロケーションです。

▲醸造所はフランスのほぼ最南端、スペインとの国境直前にあるバニュルス・シュル・メールにあります。





マニュエルは2006年に3haの畑を取得しており、オーガニック、そしてビオディナミのアプローチを採用しています。


地中海に面し、強い日差しと乾いた風が吹きつけるこの地は、決してブドウを生育するために適した環境ではありません。標高300m前後の斜面に広がる畑は北向きで、機械が入れない急斜面も多く、すべて人の手に委ねられています。


土壌はシスト(片岩)が主体で、水分保持力が低く、ブドウ樹にとっては常にストレスのかかる土地で あえて、収量を抑えながらブドウの凝縮度を高めていきます。


以前の所有者がオーガニック農法ではなかったため、最初の2年間は品質に納得がいかず、収穫したブドウはすべて売却していましたが、2008年にようやく自らのワインをリリースします。


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そして醸造。ここに彼の真骨頂があります。


除梗せず、足踏みによる破砕、自然酵母による発酵、古式の木製プレス機の使用。ポンプの使用は極力避け、重力と手作業によってワインを移動させます。さらに、発酵中のワインに音楽を聴かせるというユニークなアプローチも取り入れています。SO₂は一切添加せず、ワインは極めてピュアな状態で瓶詰めされます。


こうして生まれるワインは、マニュエルの出自がそうさせるのか、長期熟成のポテンシャルを感じる重厚感のあるスタイルで、まるでトスカーナのサンジョヴェーゼのよう。シスト土壌由来のミネラル感が複雑に絡み合う、強く印象に残る味わいです。


彼の醸造所にはアンフォラや樽を含めても10〜12基ほどしかなく、その少なさには驚かされます。

▲マニュエルの醸造所

ただ、それ以上に印象的だったのは空間そのものでした。醸造所の中には様々なオブジェや装飾が置かれており、どこか美術館のようでありながら雑多で、良い意味で統一感のない空間。趣味の一つとしてワインを造っているかのような、不思議な魅力を感じる場所でした。

▲左:シルヴァノのコンクリートタンク/奥:オルチョジュダやエリオの樽

タンクサンプルはまだ2025年ヴィンテージということもあり、非常にエネルギッシュで力強い印象。タンニンのコクやエキス分も豊かで、これからの熟成が非常に楽しみな状態でした。

▲左のスピーカーで夜な夜な爆音で音楽を流し、卓球をしたとかしていないとか…

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さあ、いよいよディナーが始まります!
振る舞われたのは、ベーカリーを営んでいるマニュエルの奥様が朝9時からパンを焼くオーブンで火入れしてくれた、マニュエルが飼っている羊。半身丸ごと焼き上げたような状態で、頭もまるごと取り出され、マニュエルとブルノが豪快にカットしていきます。

▲左:ブルノ・デュシェン/右:マニュエル

羊を頭付きの状態から食べるのは初めてでしたが、脳みそもいただき、味わいは濃厚でオイリー、重ための白子のようなニュアンスがあり、とても印象的でした。


肉質は柔らかいものの、朝からじっくり火を入れていることもあり、やや水分が抜けて少しパサついた仕上がりだったのも、どこか彼ららしさを感じさせる一皿でした。

▲ブルノが取り分けてくれた羊

食事が進むにつれて場はどんどん盛り上がり、マニュエル、キッコー、そして研修生のジャックと、気づけば周りはイタリア人ばかり。自然とサッカーの話題になり、好きなチームの話へ。自分が知っているチームとしてユベントスを挙げると、ナポリ出身のキッコーとミラン出身ジャックは明らかに嫌な顔をしており、イタリア人にサッカーの話は軽々しく振るものではないと、身をもって学びました。

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一緒にワインを飲んで感じたのは、彼がワインをただの売り物として捉えていないということです。もちろんビジネスとして販売することも大切ですが、彼にとってワインはそれ以上のもの。人と人が出会い、食卓が盛り上がり、夜が楽しくなり、そこで乾杯して分かち合う(何回乾杯したことか)。そこに彼自身の想いやこだわりがしっかりと込められています。


実際、食事と合わせて飲むとその良さがより際立ちます。すぐに飲んで楽しむタイプではなく、時間をかけて熟成させることで真価を発揮するワインですが、その分ポテンシャルは十分。完成度も高く、ぜひ多くの方に知っていただきたい生産者のひとりです。

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