こんにちは。ナチュラルワイン教室を担当している遠矢です。
2025年のスペイン生産者訪問記、第3弾をお届けします。
ボデガ・シンコ・レグアス、ラス・ペドレラスとマドリッドを拠点に訪問した生産者が続きました。せっかくなので、この時の訪問の流れのままルベン・ディアスをご紹介します。
ルベン・ディアスは、前回のラス・ペドレラスと同じシエラ・デ・グレドスの生産者。
セブレロス(Cebreros)という街に醸造所があります。


【山火事のこと】
2026年7月末現在、セブレロスだけでなく、これまでご紹介したラス・ペドレラス、ボデガ・シンコ・レグアスのワイナリーがある街の至近距離で大規模な山火事が続いています。
SNSの発信などで、彼ら彼女らの不安と怒りと意志をうかがい知ることができます。
私が2025年11月のツアーで訪れたフランス南部などでも、その年の山火事で黒焦げになった木が点々と続く場所を見ることがありました。重要な畑がすべて失われたという話も聞きました。
私たちはワインを紹介するとともに、生産者が置かれている状況も伝えなければなりません。おいしく楽しく飲むだけで終わらず、造り手のことや文化や歴史に目を向けてほしい。そういった顧客の存在が、厳しい状況にある人々の支えになると思います。
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さて、訪問記に戻りましょう。
ラス・ペドレラスのバルバラのパートナーが経営するレストランで、たらふくお昼を頂いた後、16:00過ぎに到着。
「ガハハ」と表現するにふさわしい笑い声とともに、ルベン・ディアスが迎えてくれました。
この日は日本語への通訳をしてくれるマユさんが不在で、ルベンの友人の生産者夫婦が英語で通訳してくれましたが、スペイン語がわからない私が見ていても翻訳に難儀しているようで、おそらく訛りも結構あったのかもしれません。
いずれにしてもルベンの笑い声で、すべてを吹き飛ばしながら進んだ訪問でした。
夕方で少し冷たい風も吹いていたので、一つだけ畑を見学し、あとは醸造所で試飲をしようということになり、みんなで乗り合わせて畑へ向かいました。
【カノニコス(canónigos)の畑へ】
D.O.セブレロスの土壌は花崗岩質が基本だそうです。表土には砂礫状の小石が見られるスレート(粘板岩)が混じり、水はけが非常に良く、凝縮したミネラル感を与えます。標高は650〜1,200mにおよび、常に吹く風がブドウの酸を保持する役割を果たしています。北側の谷は大陸性気候の影響を強く受け、昼夜の寒暖差がブドウの成熟をゆっくりと進めてくれます。伝統的な産地でもありますが、ルベンの話では、若い世代が過酷な屋外作業を避けるため、労働力不足が課題となっているそうです。
セブレロスの街から車で10分ほど。広く開けた広場のような場所に着きました。
2025年が初収穫になった畑で、かつては地元の郵便屋が所有していたところを最近取得したそうです。少なくとも8年前から有機栽培が続けられており、耕作せずに草を刈るのみの農法が取られていました。畑名の「カノニコス」とは教会の役職を指すと同時に、この地に自生する薬草の呼び名でもあります。


道路や街からも離れていて、とても静かな場所です。
花崗岩の砕けた砂利の表土、ところどころに大きな岩があり、点々と株仕立てのブドウの木。さながら日本庭園のようで、畑という感じがあまりしないところでもありました。



「この粒の大きさを見てくれ。一般的な灰色の花崗岩にピンクの花崗岩が混ざり合っていて、どちらも粒が荒くて大きい。このゴツゴツとした砂の粒こそが、ワインに骨格を与えるんだ。」
「メインは花崗岩だが、特定の区画にはシリカ(ケイ土)やクォーツ(水晶)の層が走っている。これがワインにタイトな酸と、硬質なミネラル感を与えるんだ。この上にもう二つ畑があって、近いうちに手に入れることができるかもしれない。そうすればここの単一畑のワインが造れるよ。」


【ルベン先生の講義】
日もとっぷり暮れて、帰ってきた醸造所にはルベンが地図と土壌のサンプルをいろいろ並べて試飲の準備をしてくれていました。


▲▼ルベン先生の講義資料

ワイン造りについて話すルベンを見ていると、いろいろな方法を試さずにはいられない性格と、その経験則と想像から、常にレシピのアイデアが溢れ出しているという感じでした。
最終的に樽で熟成させているものや非売品も含め28のワインの試飲メモが残っていますが、同じ仕込みでも樽違いでいくつもあるので、どのくらいの種類を仕込んでいるのか本人もわからないのではないでしょうか。

「2024年のドレは、アルビーリョではなくドレ100%だ。2つの畑(通常の灰色の花崗岩とピンクの花崗岩)から来ている。12日間の果皮浸漬をして、区画ごとに醸造した。その一部を「フィオレラ」と「ボタ・デ・ドレ」に回し、残りの2,000リットルがこのドレになったんだ。 ステンレスタンクだけで、樽は一切使ってない。瓶詰め前の数ヶ月、澱と一緒に寝かせてバトナージュして、口当たりの強さを調整したんだ。フィネスと酸が綺麗に出ているよ。」

「次は25年(タンクサンプル)だ。24年との違いは、15%ほど果梗を残したこと。24年は除梗したが、25年は果梗を入れた状態で12日間果皮浸漬した。24年より骨格があり、少し樽をかませれば、ブルゴーニュのような雰囲気も出る。まだ検討中だが、可能性は感じているよ。」
どちらもハチミツとパイナップルの印象と果皮浸漬から来る香ばしさを持ちつつ、24年は涼やかさ、25年は柿やハッカのニュアンスが強く感じられます。同じ銘柄になるとしても、ひとつのレシピに縛られることはありません。
樽ひとつとっても、「栗はオークよりもワインを酸化(酸素供給)させない気がするから、還元的になりそうだが、アルビーリョはもともと酸化的になりやすい品種だから、この組み合わせがどう出るか。今は栗の樽を使い続けるか、オークに戻すか、ミックスにするか悩んでいるところだ。」と思案を繰り返しているようです。

▲Cuesta de Las Raices
「クエスタ デ ラス ライセスは4〜5ヶ月という非常に長い果皮浸漬を行っている。23年は5ヶ月くらいかな。22年はもっとフレッシュでワインらしい感じだったが、23年はより酸化的だ。プレスする時は、表面の茶色くなった酸化部分を慎重に取り除く。その下には、守られた美しい黄色の液体があるんだ。 ガストロノミックだろう。蜜のような、品種本来のエッセンスが凝縮されている。」
長い果皮浸漬由来の豊かなコハク色、黄桃にみりんのような濃さを感じますが、液体はシルキーでピュア。いわゆるオレンジワイン的なフレーヴァーとタンニンの強さとは異なる、複雑な要素が馴染んだしなやかな液体でした。
さて、まだ5種類ぐらいしか試飲していません。
瓶詰めされていないタンクからのワインや、それが終わったと思ったら別の秘密の部屋での試飲などが続きますので、今回はここまでにしましょう。
グレドスの3組が3組ともまったく違う訪問でした。
次回グレドス編最終回をお楽しみに。

※訪問時の動画はこちらからご覧いただけます。



