― 先程の話にもありましたが、あなたのワインのテロワールと特徴を教えて下さい。
A:私が住むアルスナン村は、オート・コート・ド・ニュイになるのですが、村の東側に広がる南向きの畑は、父の代の1971年からビオロジック栽培を実践し、エコセール、AB認証を取得しています。
粘土石灰質の畑ですが、石灰岩の比重が高いため、果実味に富み、エレガントで余韻の長い味わいのワインになります。
ここは、『HAUTS-COTES-DE-NUIT LE PRIEURE(オート・コート・ド・ニュイ・ル・プリュレ)』の畑です。隣村のムイエ村には、東向きの畑があり、ここはシャルドネが植わっています。アルスナンと同じく粘土石灰質の土壌で、同じ栽培方法です。
『BOURGOGNE BLANC(ブルゴーニュ・ブラン)』、『CREMANT DE BOURGOGNE BRUT BLANC DE BLANCクレマン・ド・ブルゴーニュ・ブリュット・ブラン・ド・ブラン』は、この畑から生まれます。
コート・ド・ニュイには、いくつかの借り畑があります。先程もお話した通り、もっとテロワールやヴィラージュの特徴を表現したワインを造りたいと思い、コート・ド・ニュイのワインを造り始めました。ニュイ・サン・ジョルジュには、畑を2カ所借りています。『NUITS-ST-GEORGES 1ER AUX-BOUDOTS(ニュイ・サン・ジョルジュ 1er オー・ブドー)』『NUITS-ST-GEORGES 1ER LES DAMODES(ニュイ・サン・ジョルジュ1erレ・ダモード)』の畑は、柔らかい石灰を含んでいるため、繊細でエレガントなワインが期待できます。この畑は、ラターシュの畑(DRCの単独所有)から50mも離れていない2区画先です。グランクリュではありませんが、私のドメーヌにってグランクリュのような位置づけのワインです。
― 2008年、醸造所を改築されましたよね。
A:2003年にドメーヌを引き継いでからは、父も使っていたカーブで醸造をしていました。しかし、衛生面には不安がないとは言えませんでした。悪いバクテリア(ブレタノ)を繁殖させないために減菌の努力はしていましたが、どうしても酸化防止剤(SO2)を添加しなければならない状況がありました。醸造の工程で、ワインが病気を抱えていたり、菌が繁殖している場合は、テロワールを表現しなくなります。カーブが手狭になっていたということもありますが、もっと衛生的な環境を作るために、カーブを建て替えました。以前のカーブは温度管理のできるコンクリートタンクを使用していましたが、もっと衛生面で安心なステンレスタンクで醸造します。結果として、酸化防止剤(SO2)の減量もできましたし、効率良く仕事ができています。*2008年から、新しいカーブで醸造していますが、テロワールの表現・味わいは一貫して変わっていないと思います。
― 醸造の段階で大切にしていることはありますか。
A:私は、果実味があり、繊細で余韻が長いワインを目指しています。
醸造でもできるだけ自然の造りを心掛けています。栽培で健全なブドウを作っていますので、その力を信じ、自生酵母で発酵させています。農薬を使っている多くの生産者は、ブドウ自体に自然酵母が足りないから、培養酵母を使うのです。発酵時の抽出には、丁寧に苦味を出さないようにゆっくりピジャージュを行います。毎日、試飲をしながら、そのタイミングと回数を図ります。
― 新しいカーブには新樽が並んでいましたが、醸造時の樽熟成の考え方を教えてください。
A:父は新樽比率100%で熟成していましたが、私は新樽比率を30%程度に抑えています。私の嗜好でもあるのですが、樽で化粧をしたタニックなワインはあまり好きではないのです。化粧をすることで、ブドウやテロワールの味わいが、隠されてしまいます。樽を使う目的は、空気と触れ合わせて、酸素供給をすることで、複雑味のあるワインを造るためです。樽の比率はミレジムによってバランスを取りながら変えています。
― 2009年は近年最高の出来、グランミレジムと言われていますが。
A:グランミレジムのワインは、もちろん楽しみにお待ちいただきたいワインです。ポテンシャルが高く、丸い果実味に仕上がっていると思います。私自身も期待しています。造り手として言えば、2005年や2009年のようなグランミレジムには、おいしいワインが仕上がる確率は高いのです。2004年、2008年というようなブドウ栽培の難しい年に、良いワインを仕上げてこそ誇りが持てると思います。私の2004年のワインは、とても繊細で果実味が豊かなワインに仕上がりました。2008年は、爽やかな果実味にエレガントなタンニンを持ち合わせた、長期熟成ワインに仕上がっています。ぜひミレジムの違いを皆さんも楽しんでみてください。
最後に、今回来日して多くの方にお会いすることができました。みなさんから高い評価をいただき、とてもうれしく思っております。ディオニーとは、2003年からのお付き合いですが、本当によいお客さまに恵まれていると感じました。お客さまもスタッフも素晴らしい方々ばかりです。本当にありがとう!
― 本日はありがとうございました。
オレリアン・ヴェルデのワイン……それは、繊細かつ果実味溢れる味わいで、五感を目覚めさせる味わいです。そこにあるのは、ブルゴーニュのテロワールの記憶、そして自然と造り手が奏でる協奏曲。ワインが呼び覚ます感覚の広がりに、きっとあなたも驚愕することでしょう。
*2007年の醸造は前の醸造所となる。2007年の味わいに関しては「ミレジムの特徴がよく表現されています。今飲んでも十分に楽しめます。」との本人コメント。