今回、フランス現地取材の機会を得ることができました。その第一弾は、堂々としたブドウの息吹と生命力を表現しながらも、大胆かつ繊細な味わいのワインの作り手シリル・アロンソのインタビューです。情熱、高揚、繊細、洗練…様々な感覚のキーワードを呼び起こす彼のワイン。飲む人の奥底に訴えかけるものは、ブドウの魅力以外にも作り手という人間としての魅力もあるように思えてなりません。
— アロンソさんのワインを飲んで単純においしい!と思いました。そこでワインづくりにおいて、アロンソさんが大切と思っていることは何でしょうか?
アロンソ(以下 A):はるばる日本から来てくださって、ありがとう!そうだね、私の考える質の良いワインを作るための最も重要な要因としては、第一にブドウ畑の自然環境について熟慮すること。そして、土壌づくり。微生物の活性を促進するために通気を行い、雑草を抜かず、自然物資でのぶどうの樹の衛生管理を行うこと。有機肥料を使用し、生命の営み全てを尊重することかな。忘れていけないことは、ブドウに付着している自然酵母の力しか使わないということです。あとは、糖と酸のバランスが最も良い状態の熟したブドウを手摘みで収穫すること。先輩たちから「いいワインを作りたいなら、最後に収穫しなさい。」と言われたもんだね。収穫量は抑える必要があって、節度をもって摘むことが大事。また、収穫した後にタンク詰めするときに衛生を保つのは必要不可欠です。そうそう、自然発酵の時間を尊重する必要もあるね。つまり、気を遣う点はいくらでもあるんだよ。本当に忍耐が重要。ワインは生きていることを忘れてはいけません。
— アロンソさんが考えるおいしいワインの定義とは、何ですか?
A:おいしいワインとは、バランスが良くて、そしてスムーズで、果実味があり、「どこの地方で、何の品種で、どの生産者が作ったのか?」など、きちんと語れるワインじゃないかな。語れるワインというものは、それだけ魅力があると思うね。
— 師匠は、自然派の父とも言われる「ジュール・ショーヴェ」ということですが、彼から学んだことや受け継いだ思想はどんなことですか?
A:ジュール・ショーヴェの残した文献などから、彼の仕事や人生に対する思想を学んだんだ。やっぱり、そこから強い影響を受けたし、僕のような醸造家としての仕事に対する考え方の自由がそこにありました。ジュール・ショーヴェは、自然派ワインの先駆者です。彼は我々に化学薬品なしでワインを作ることができることを証明しました。「おいしいワインは、薬なしのワインだ。薬は、病気のために使われるべきである。(1960年ジュール・ショーヴェ)」と言ってるしね。それぞれのキュベやミレジムには違いがあり、それぞれ独自の個性が表れるものです。そこから得られる色々な発見があるんだ。つまり、何もないことから何も習得できないということ。そして、ワインは私に謙虚さを教えてくれたね。
— ご両親は、ボージョレ地区で有名なレストランを経営されていたということですが、両親からどんな影響を受けていられると思いますか?
A:まず、両親のおかげで有名な「自然派」ワイン生産者と知りあうことができました。そして、彼らからワインにまつわる様々なことを聞き学ぶことによって、自分の持つ感性を開花させてもらいました。両親には忍耐力、好奇心、観察力、人や自然を尊重することを教えてもらいました。