― 次は、焼酎について伺いします。おいしい焼酎に共通する味わいはありますか。
N:おいしさの基準は、日本酒と共通する部分がありますね。私たちが取り扱う焼酎は、主原料が芋と麦のものが大半ですが、やはり原料の風味、香りが楽しめるものです。芋であれば芋のふくよかな甘み、麦であれば香ばしさが感じられることですね。そして、雑味が少ない旨味や香りというのも一つの基準になります。ただ、それを特徴・個性にしている商品もありますので、これは飲む方のお好みによりセレクトしていただくということになるでしょうか。それから、焼酎は懐が深く、ストレート、ロックからお湯割りまで飲み方も多様です。おいしい焼酎という観点でいえば、お湯割りで楽しむとき、良い香りがするというのも基準にできますね。
― 焼酎の原料はさまざまですが、製法が味わいを大きく変えることはあるのでしょうか。
はい。焼酎の蒸留方法としては、常圧蒸留と減圧蒸留の二種類があります。常圧蒸留は、昔ながらの製法で、蒸留機内の気圧を操作することなく常圧で蒸留する方法です。アルコールを含んだ醪(もろみ)は、約90℃ぐらいで沸騰し、原料がもつ本来の甘みや旨味、香りが存分に堪能できる仕上がりになります。減圧蒸留は、機内の圧力を下げ低温で蒸留する方法で、醪(もろみ)が低温で沸騰するため、雑味をふくまないより軽やかな味わいに仕上がります。減圧蒸留と常圧蒸留をバランスよくブレンドし、口当たり良く仕上げている商品もたくさんあります。焼酎は、原料だけでなく、麹の種類や蒸留方法によって味わいや風味が大きく変わるお酒ともいえますね。
― 焼酎の商品展開では、どのような商品に注目しているのでしょうか。
N:焼酎は、数年前に訪れた空前のブームで、いっきに裾野が広がりました。じつは、私たちの焼酎への取り組みが日本酒よりも遅かったということもあり、商品のラインナップという視点でお話すると、まだまだ開拓中の市場ともいえます。そんななかで、私たちなりの商品を展開したいという思いがあり、味わいにプラスして付加価値をご提供したいと考えています。それは、ディオニーならではの蔵元とのお取り引きで、私たちしか扱えない商品を皆さまにご提案するというものです。地元で長く愛されてきた門外(県外)不出の商品をご紹介させていただくのも、付加価値の一つですね。
― 最近、焼酎の原料にも有機栽培や減農薬で作られたもの、さらに麹にもこだわりを持った商品があると聞きましたが、実際には増えてきていますか?
N: まだ多くはないのですが、完全な有機栽培とまではいかなくても、減農薬に努めたり、契約農家から仕入れたり、産地を限定した原料を使っている商品は出始めました。ここ最近、国産の麹米や麹麦で醸すという動きは加速していますね。私たちは、安心して安全な焼酎を飲んでいただきたいという思いから、原料はもちろんのこと、発酵に用いる麹にもこだわりを持った商品に注目しています。そのような商品を積極的にご紹介すると同時に、今後の取り組みとして、有機栽培の原料を使って、国産の麹で醸したプライベートブランドの焼酎造りを考えています。
― それでは、国酒の今後の取り組みとビジョンを教えて下さい。
商品展開という視点では、これからも国酒全般において、日本全国の小さい蔵で丁寧に醸された、味と価格のバランス良いお酒、そしてその蔵の特色がでている「ほんまもんのお酒」を厳選して、ご紹介していきたいと考えています。お酒が飲まれ評価されることで、地域貢献の一助になればともいう思いもあります。お酒に関わるものとして、まだまだ日本酒や焼酎など国酒の良さをアピールできていないと痛感しています。日本酒や焼酎が日本の食卓に合わない訳がないんです。アルコール市場では、発泡酒や焼酎など、時としてブームを巻き起こす酒類もありますが、東京でプレミアがつくと、東京でしか買えなくなり、価格も高騰するという現象は、少しおかしいように思います。私たちは、国酒を適正な価格で提供させていただき、日本のお酒が和食の名脇役だということ、そしてその文化を伝えることで、一人でも多くの方に愛されるお酒になるよう、これからも意欲的に取り組んでいきたいと思っています。
— 本日は、有り難うございました。
今、若者の酒離れが進行しています。なにも日本のお酒を偏愛する必要はないと思うのですが、食事を楽しむとき和食に寄り添う日本のお酒があるということを思い出してほしい、と強く感じました。ディオニーの扱う日本のお酒から何かが変われば……そんな思いがひしひしと伝ってくるインタビューでした。