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京都に本社を置くディオニーは、国酒を適正な価格で提供する会社。日本のお酒、日本酒や焼酎が和食の名脇役だということ、そして、その文化を一人でも多くの人に伝えたいと熱く語る取締役部長、西木秀行インタビュー

西木秀行のプロフィール
ディオニー(株)取締役部長であり、国酒の統括。文化と風土に根ざした日本のお酒を心から愛してやまない。お酒をおいしく飲むために、たしなむゴルフの腕前も考え方も安定していて「ブレない」飲酒を始めてから一日たりともお酒を欠かしたことはない。
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インタビュアープロフィール
バブルの落とし子。ブランド志向の20代を過ごし、30代半ばにして本当の心の豊かさを求め、シンプルライフに目覚める。モノを見極める審美眼は周囲からの評価も高く、数多くの執筆を手掛ける。おいしいものへの追求も人並み以上なのだが、アルコールが得意でないため、ワインには量より質を求める。好きなワインのタイプは、ヴァン・ナチュレルの白。映画会社、レコード会社、出版社などを経て、WEB・モバイルプランナー、エディター、ライターとして活躍中。2012年1月にオープンした自然派ワイン専門店『pcoeur(ピクール)』のプロデューサーを担当し、現在、オーナー兼店主を務める。
 
【編集・執筆】池田 あゆ美|オフィス アイダブリュー
// Office AIW // オフィス アイダブリュー

日本酒のおいしさと文化を一人でも多くの人に伝えたい。

おいしい日本酒は、「お米の旨味」が物語る

私たち日本人は、日本の伝統的な食文化である日本酒や焼酎のことをどれくらい知っているでしょうか。和食や日本酒が海外で注目されてきている今だからこそ、日本の素晴らしい文化、日本のお酒のことをいま一度、見つめ直してみる必要があるのではないでしょうか。ディオニーは、厳選したフランスワインだけでなく、国酒の取り扱いも以前から行っています。今回は、日本酒や焼酎などの商品厳選の視点やこだわりについて伺いながら、本当においしい日本のお酒とは?! その魅力に触れてみたいと思います。

― 取り扱う国酒の分類とどのような視点で商品を展開されているのか教えて下さい。

西木(以下N):私たちは、国酒の分類として日本酒、焼酎、リキュール類を扱っています。すべての国酒において「旨くて安い」をキーワードに商品の提供をしています。「ほんまもん(ほんとうにおいしいという意味)の国酒」の魅力を感じていただけるよう、商品を厳選してご提案させていただきます。商品展開のなかには、既成商品の採用というだけでなく、プライベートブランド商品も精力的に開発します。

― おいしいお酒を厳選する基準や視点というのは、あるのでしょうか。

N:総論になってしまうのですが、お酒というのは嗜好品ですから、皆さまにご満足いただくには、商品のラインナップはバラエティに富んでいないといけないと思っています。例えば、このお酒を私個人がおいしいと思っても、ほかの人がそう思うとは限らない。国酒選びのポイントは、画一的ではなくてお客さま目線でバラエティに富んだおいしさを発見するということですね。

― まず、日本酒について伺います。どのような「旨くて安い」商品に注目されていますか。

N:日本全国、各県にたくさんの蔵元があり、最近では皆さんいいお酒を造っているんです。蔵元の意識の変化や杜氏の技術の向上などで、いわゆる普通酒というものが減少してきています。要因の一つは、大手酒造メーカーの大量生産型商品、例えばパック酒やカップ酒のような安いお酒が全国に横行し、地元産の普通酒が売れなくなった現実があるんです。その手だてとして、地方の小さな蔵元は努力と研鑽を重ねてワンランク上のお酒、純米酒や吟醸酒を造り出している。そういった商品は、大手メーカーにはないこだわりや個性を持っています。そのなかに全国的に知られていない銘醸蔵とおいしいお酒がまだまだ眠っていると確信しているのです。それらを発掘して、皆さまにご紹介したいと考えています。

― バラエティに富んだなかにも、おいしい日本酒に共通している味わいはあるのでしょうか。

西木部長は成人して約25年間、一日たりともお酒を欠かしたことがない

N:日本酒の原料は、お米がメインです。ですから、お米の旨味がでているかどうかですね。日本酒だから、どんなお酒でもお米の味わいが出ているかというとそうではないんです。醸造用アルコールや人工添加物を多く含んでいる工業製品的な商品は、表情の乏しい画一的なお酒になってしまいます。そういった商品を否定している訳ではないのですが、一原料となる「お米の味」がしっかり感じられること、それがおいしい日本酒の一つの基軸ではないかと思います。

― 原料のお米の味わいということですが、酒米にもいろんな品種がありますよね。

N:酒造好適米というのは、酒を造るために育てられたお米ですから、それぞれに特徴があり、おいしいんです。酒米として有名なのは兵庫県産の山田錦ですが、おおむね良い大吟醸酒を造ろうとする場合、この酒米が使われる。そういうお酒はおいしい、けれども人気のある酒米を使うと、どうしても価格が跳ね上がる。「旨くて安い」商品をと考える私たちの好み、そして希望ともいえますが、地元産のお米と水で醸して欲しいんです。お酒は土地、気候、風土に拠るものなんです。その土地の気候・風土で育ったお米は、その土地の水と相性が良い。さらに育った風土で醸されるため、その土地の個性を持ったおいしいお酒ができるという考えです。例えば『京生粋』は、京都固有の酒米「祝」を使用し、仕込み水や酵母も京都産で醸したほんまもんの京の酒です。これに限らず、地元産の酒米で造ったお酒を、地産外消の考え方でご提供できればと思うんですよ。

― 日本酒の味、素材の味を引き出すのは、造り手の腕も関係していると思うのですが。

N:そうですね、原料のお米の味わいを最大限引き出すのが杜氏の技といえます。仕込みから発酵まで、日本酒造りの工程で肝心なところは、人(杜氏)が判断します。五感すべてをフルに使い、長年の経験や感覚、勘次第で素材から理想の味わいを引き出すのが、杜氏の腕の見せどころです。丹精込めて造られたお酒を飲めば、素材の味わいとともに、蔵や杜氏の造りの信念が表現されているともいえますね。