9月12日から約1週間、アルザス地方とジュラ地方の収穫に行ってまいりました。
アルザスといえば、向かう先はもちろんドメーヌ・マルク・テンペ。収穫予定は14日からだったのですが、マルクの判断により16日に変更。アルザスで一番最初に収穫するのは酸味が重要とされるクレマン用のブドウなんだそう。クレマンを造っていないマルクのドメーヌでは、ピノノワールから収穫が始まりました。
収穫の様子を少しずつアップしていきますので、皆さんもヴァンダンジュに参加している気分になって、どうぞ最後までお付き合い下さい。それでは、初日のレポートからスタートです。
朝7時に朝食が始まり、7時半に集合。テンペさんが運転する車で移動すること約10分。ヴォージュ山脈を右手に眼下には際限なく畑が広がる丘陵地の中腹くらいまで上がってきました。そう、ここが、ピノノワール・アルテンブルグとして皆さんに愛飲されているピノノワールの畑です。(写真1)
晩秋を思い起こすような寒さのなか、一斉に収穫が始まりました。参加者は、アンヌマリーのお父さんの時代から、かれこれ40年以上もヴァンダンジュに参加しているというクロード、テンペ家の隣人でありマルクがドメーヌを立ち上げた頃から一緒に働いているリーズを筆頭に、今回の収穫は初体験という近所のおじちゃん、おばちゃん、若ものなど総勢8名。それぞれにハサミとバケツが手渡されます。(写真2)
初心者の私は、畝を挟んで向かい合ったベテランのリーズから、「熟していないものは省き、熟したものだけを残さず収穫するんだよ〜」と教わりました。アルザスのブドウ樹は比較的高く、収穫は立ったまま。前日までいたジュラと違って、地面に腰を下ろすこともなく足の筋肉痛というよりも腰に負担がかかる程度です。(写真3)
ブドウ粒はプルンプルンで、艶のある深いグレープ色がとても上品。やはりピノは高貴なブドウだとその姿・カタチから実感しました。まるまるに熟した房を片手で持つとその重さに驚くほど。そりゃ、ちょっと食べたくなりますよね。なので、ちょっとツマミ食い……甘くてうまい! 食用に比べると少々甘さは控えめだと思ったのですが、それでも充分甘くて、みずみずしい。ピノに貴腐がついた年のみローズソヴァージュとして醸されるのですが、今年は貴腐もほとんどつかなかったことから、すべてピノノワール・アルテンブルグとして醸造されます。
毎年収穫を体験しているリーズとクロードは「今年のピノめちゃくちゃ美しいね。こんなに健康で熟したブドウやとワインの出来が楽しみやなー」と口々に言っていたので、2009年は「Bon Millesime(ボン・ミレジム)」に期待が膨らみます。(写真4)
一方のテンペさんは、ひと通り畑を見てまわり、ハサミで切ったブドウの房にかぶりつき熟度を確認していました。前日に「収穫中はちょっと神経質になっているから」と事前予告を受けていて話しかける雰囲気でもなかったので、こっそり味見をしていると、目ざとく見つけられ「食べる前に僕にちゃんと聞いてもらわなあかんよ〜」と冗談を交えながらもきっちりと注意されてしまいました。(写真5)
収穫の手順は、同じ畝に2人一組で向かい合って行われます。ハサミで切ったブドウはバケツに次々に入れていき、それらの一杯になったバケツを交換していきます。ブドウを大容量のプラスティック容器に詰め替え、収穫したブドウを順に醸造所までトラクターで運ぶのがヤンの役割です。(写真6)
畝を2往復した9時頃、「cass-croute(カスクート=軽食)!」との声が。そう、収穫中に必須の休憩タイムです。用意されていたのはソーセージやパテのほか、パンやチョコレート。飲み物にはコーヒーやジュース、もちろんマルクのワインが振る舞われます。収穫中は毎日カスクートタイムがあるので、朝9時からちょっとした立ち飲み状態です。(写真7、8)
次回につづく。