ラングドック地方ペズナの北部。ドメーヌ・ド・ラ・ガランスは、肥沃で乾燥した丘陵にある、牧歌的な風景のなかにポツンと佇む秘境のワイナリーです。1939年、祖父が急斜面の農地を購入。ブドウ畑ではなかった土地を祖父と父が耕し、ブドウ栽培を始めました。1991年、キノネロ夫妻は「ラングドックのグランヴァンを作る」という未来に情熱を持って身を投じます。自然と共生する栽培で、できるだけ伝統的な方法で醸造することに情熱を傾け、優良なワインを造り出す……そんな真摯な姿が多くの人から愛され、信頼される理由です。キノネロのもとには、この地で活躍するレストランのオーナーやワイン造りに夢を抱く青年などが今日も集まり、ワイン談義に華を咲かせます。
ピノノワールの植わる畑は、標高350メートル。ローズマリーやタイムなどのガリッグ(ハーブ)が茂る原野に囲まれた、ハーブの風が舞う畑です。ブドウは、ビオロジック栽培によりその土地の個性を活かし、ブドウの持つ可能性を最大限に引き出す農法で栽培します。一見雑草だらけの畑は、伝統的な方法で1年に何度も土を耕して雑草処理をするのですが、実はこの雑草に被覆作物としての効果があります。だから除草剤や化学物質を使用せず、自然に優しい農業が行えるのです。母なる大地を尊重するキノネロの接し方が、テロワールの個性を豊かに具現化するのです。【土壌:片麻岩、花崗岩】
日本特別限定キュヴェの品種は、ピノノワール……ラングドックでは、定着が難しいと言われる品種です。けれど、標高が高く、風通しの良い畑の高貴なピノノワールは、フルーティなヴァン・ド・ソワフ(※喉の渇きを心地良く潤すナチュラルな旨味のワイン)の実現になくてはならない存在でした。『キュヴェ・風』は、薄ピンクから赤紫にうつろいゆく夕暮れ空と稜線のような色合いが美しい、ロゼとルージュの2種類です。味わいは、ラングドックのテロワールの力が体にじわじわとしみ込み、心がホッとゆるむフレッシュで優しい仕上がりです。
■ ルージュ
スイトピーのような赤い花、またバナナやキャンディーのようなフレッシュでスイートなアロマが特徴です。口のなかに若々しいタンニンが程よく踊り、豊かな果実味とフレッシュな酸味のニュアンスも広がります。しっかりしたバランスと時間の経過が楽しい、ピュアで素朴なルージュです。[相性の良い料理:チキンのトマト煮]
■ ロゼ
ストロベリーやアメリカン・チェリーのようなチャーミングなアロマが特徴です。口に含むと、しっかりとしたミネラル感と、爽やかな酸味や苦味に気持ちよく導かれます。程よいボリューム感と予想外にドライでキレのあるフィニッシュが心地のよい、心が癒されるようなロゼです。[相性の良い料理:海老のチリソース]
2008年初夏、キノネロの住む南仏では極端に風が少なく、ブドウの病気の心配に頭を巡らしていました。そんな彼のもとに、待ち望んだ「風」が吹きました。それは、ドメーヌを訪れたディオニースタッフが贈った掛け軸に書かれたもので、フランスと日本を結ぶ新しい風になれ!という思いで書道家・池田紅華が書いたものでした。その書は、書道に馴染みのない異文化の人たちにも、言葉の美しさや面白さを直感的にイメージしてもらいやすいように「遊書(あそび文字)」と言われる手法で書かれました。キノネロは、その造形の美しさに感動し、インスピレーションを刺激されます。日本から偶然にも「風」がやってきたこと、そしてピノノワールの植わる畑は、標高が高く特に風が強いことから、日本向けの限定キュヴェを造る決意をし、『キュヴェ・風』と命名したのです。「私たちからのメッセージは、このワインの名前のようにシンプルです。異文化である日本で、私のワインに興味を持っていただき、皆様に受け入れていただくことをとても嬉しく思います。日本への敬意を表したいという気持ちが、このワインを誕生させました」とキノネロは語ります。南仏からの「風」があなたのもとに届き、幸せな気持ちで満たしてくれることを願って。