— お父様以外に、尊敬するワインの造り手はいますか。
R:私(ロマン)は、醸造学校を卒業したあと、ワイン醸造についてシャトーヌフ・デュ・パプにあるドメーヌ・ドゥ・ボールナールで6ヶ月学びました。この家族(ポール・コウロン、そして二人息子ダニエルとフレデリック)のワイン造りに対する情熱は、並大抵のものではありません。彼らの持っているワイン造りのビジョンが理想的でした。ヴィニュロン(ワイン生産者)としても伝統を重んじています。そして、全てを分け与える精神、人を愛する心を持つこの家族を人としても尊敬しています。
— 『フレシア・コート・デュ・ローヌ ルージュ』には、ほかの区画のグルナッシュが使われているそうですね。
R:コート・デュ・ローヌでは、1つのワインに最低40%以上グルナッシュを使用するという規定があります。私たちは代々畑も引き継いでいますが、その規定通りの作付面積かというとそうではありません。ですから、作付面積及び収量の多いロッシュグッド村のグルナッシュを『フレシア・コート・デュ・ローヌ ルージュ』に使用しています。それは、格付けが上の畑のブドウを使っているということです。この区画から穫れるグルナッシュは、ふくよかでしっかりした骨格を持ち、黒果実の香りが素晴らしいんです。『フレシア・コート・デュ・ローヌ ルージュ』はフレッシュさも特徴ですから、カリニャンなどの品種とアッサンブラージュ(複数のブドウ品種をブレンド)することで、フレッシュでフルーティ、そして果実味もしっかりしたバランスの良い味わいを実現しています。
— 醸造コンサルタント(フィリップ・カンビ、そしてトマ・ウィ)から教わったことというのは、どのようなことですか。
R:まず、タンニンの抽出についてですが、いかにふくよかで丸みや厚みのあるタンニンを抽出するかということについて教わりました。次に、アロマに関していうと、凝縮感のあるアロマの抽出方法ですね。赤ワインについては、アッサンブラージュの割合を決めるため、兄弟二人で試飲を重ね意見を交わすのですが、そのワインについての方向性や到達点がぶれてしまうことがあるんです。そんなときに、第三者のアドバイスを聞くことで、自分たちが造りたいワインというものをより明確にできます。さらに修正などが入ることで、より良いワインが造れるようになったというのが大きな利点ですね。
— アッサンブラージュで2人の意見が衝突することはないですか。
V:ははは。実は一度も意見が合ったことがありません。それぞれ好きなワインのタイプが異なるんです。ですから、『ルージュ』や『ブラン』『ロゼ』などフルーティで気取らない特徴を持つ3アイテムについては、兄・ヴァンソンの意見が、『ケランヌ』と『ロッシュグッド』は、弟・ロマンの意見が尊重されます。それぞれ土壌の個性をしっかりと表現するように努力しています。
— 『ケランヌ』と『ロッシュグッド』の特徴をもう少し詳しく教えて下さい。
R:『ケランヌ』は、粘土石灰質で重みのある土壌です。リッチで重みのある土壌のため、ブドウの根が地中深くに伸びます。ここから収穫されたブドウは、最初の圧搾の段階からすでにパワフルで品格のある味わいを出しています。『ロッシュグッド』は、岩質(ガリッグ)の下に粘土石灰質が体積している土壌です。こちらもリッチさがあるのですが、アロマはケランヌとは全く違い、果実の爽やかさとスパイシーな香りを放ちます。
— 醸造において、重点を置いていることは何でしょうか。
R:すべて重要なんですが……。まずブドウは手摘みし、できるだけ健康な状態のものを選果しています。私たちの赤ワインの醸造の特徴は、*デレスタージュや*ルモンタージュでキレイなタンニンなどの味わいの要素、そしてぶどうの色素を最大限抽出しながらも、決して濃厚すぎず全体のバランスがとれた味わいに仕上げることです。醗酵が終わった段階で、タンクから果汁を取り出しますが、タンクに残った果帽を再度圧搾し、果汁に混ぜています。
— 本日は、有り難うございました。
彼らのワインの味わいは、そのレベルの高さと価格のバランスに感動を覚えます。「カリテ・プリ」……これは彼らにとって最高の褒め言葉です。ワインをもっと楽しみたい、仲良くなりたいと考えるあなたに、ぜひ味わっていただきたい、それが私たちの願いです。彼らの人柄と同じように自然体でおおらかなワインが、きっとあなたを「Plaisir de Vin」悦びのワインの世界へと誘うことでしょう。
*ルモンタージュ
果液循環。果房からタンニンや色素を抽出するため、発酵タンクの下からワインを抜き、果帽の上にかけてタンクのワインを循環させる方法。果帽が乾燥し過ぎるのを防ぎます。
*デレスタージュ
液抜き静置法。発酵中に液体を別タンクに移し変え、もとのタンクに戻す方法。