フランス語に「カリテ・プリ」という言葉があります。それは、品質と価格が優れた商品に使われる言葉です。まさしくこの表現にぴったりなコストパフォーマンスの高いワインがあります。1715年創業、300年の歴史を持つ「シャトー・レ・キャトルフィーユ」のワインを造り出しているのは、若きフレシア兄弟。1月、初来日を果たした2人に「カリテ・エ・プリ」実現のための努力について伺いました。2人の造るワインの秘密、魅力に迫るインタビューです。
— ブドウ栽培をビオロジックに切り替えて10年になりますね。
ロマン(以下 R):ビオロジックに切り替えたことで、ワインの味わいにテロワール、そして果実そのものの味わいが表現できるようになり、アロマに凝縮感が出るようになりました。そして土壌を化学薬品などの有害物質で汚染しない、地球環境に優しい農業の取り組みができていると実感しています。それは、地球の大切な資源である水の節約にも繋がっています。
— ビオロジック栽培で味わい以外に、大きな変化はありましたか。
R:畑での仕事が増えたことが、大変ですね。3月中旬頃から本格的に始まる畑を耕す作業、畑の畝を掘り起こし、土に新鮮な空気を含ませ生態系を蘇らせる仕事があるんですが、これに労力と時間がかかります。この仕事は、3月だけでなく年間3回から4回行います。それから、害虫の防除や病気などに対して、畑の維持やメンテナンスを行うのが大変です。
— 害虫防除には、フェロモン剤を使用していますよね?
ヴァンソン(以下 V):はい。害虫防除に使用しているのは、生態系のバランスを崩さない環境負荷の小さいフェロモン剤(性撹拌剤)だけです。これは一種類の害虫にしか効果を発揮しません。それ以外にも、畑には様々な害虫が発生しますし、うどんこ病などの病気にも気を配らなくてはなりません。
— コート・デュ・ローヌでのブドウ栽培は、ミストラル(強い北風)の影響が大きいですよね。ミストラルが重要な時期は、いつ頃ですか。
R:ミストラルは、ブドウに余分な水分を与えないために重要な存在です。そして大地を乾燥させ、乾燥によって病気(うどんこ病)から防いでくれる自然の恵みです。ただし、開花の時期(5月中旬から下旬)は例外的にミストラルが吹かないことを祈ります。ミストラルによって、開花に乱れが生じてしまうんです。
— カリテ・プリ(品質と価格が優れた商品)のために努力していることはありますか。
V:価格をあげないために、つねに努力しています。瓶やコルク、エチケットなどプロダクトにお金をかけてしまったら、価格はいっきに跳ね上がってしまいます。だから、そのための企業努力は惜しみません。そして、何よりも私たちの環境は恵まれていると思います。それは、300年も続くシャトーであり、今も家族経営によって営まれていることです。そのことがコストパフォーマンスに繋がっているのではないかと思います。
— 300年の歴史を持つシャトーの強みは、ほかにもありますか。
V:新たにシャトーやドメーヌを始めるためには、畑、醸造施設など全てのものを揃えなくてはなりません。そしてワイン販売のためのルートや市場を開拓しなくてはなりません。でも私たちには、全てが揃っていました。それが私たちの強みです。そしてこれら全てとエスプリを後世に引き継いでいくことが、私たちの使命だと思っています。