— そのワイン、すごい楽しみ!そういえば、キノネロさんのワインはビオ臭さ(還元香)がありませんよね。自然派ワインには、ビオ臭いものも多いので。
Q:基本的に若い段階で瓶詰めすると還元臭があるワインになるのですが、それは単純に考えても分かるように、そのワインは酸素を必要としているだけなんです。その場合、ワインに酸素を与える方法は、いくつかあるのですが…。一つの方法として、ピジャージュなどを行って、直接空気と触れさせてあげるという方法があります。しかし、ほかの自然派ワインの造り手は、ワインを空気に触れさせることを好まない傾向にあります。それは、空気との接触があることで、雑菌繁殖の可能性が高くなるからです。その結果、SO2の添加もしなくてはいけません。その中でも私は、大きな樽のなかにワインを36ヶ月という長い期間、置いておくという方法をとっています。そうすることで、樽の木を通じて、ゆっくりと酸化熟成します。「ゆっくり」というのは大事なことですね。これは透気性のことを指していて、ステンレスタンクでは実現することはできません。アルコールの発酵時には、二酸化炭素が発生するのですが、その発生した二酸化炭素も一緒に樽に入れて長期熟成させます。そのわずかに含まれている炭酸ガスが、空気からワインを守る働きをします。「その瓶詰めするタイミングは?」というと、二酸化炭素の残量の数値を確かめながら、見極めています。若い段階で瓶詰めすると二酸化炭素が多いため、コルクとワインの間で還元がおこってしまいます。還元という問題が発生しないようにするには、長期熟成という形が一番適していると思います。
— それは誰かに教わって気づいたことなんですか?
Q:いいえ、いろんな経験を通して、身に付いたものです。世界中で素晴らしいとされているワインは、すべて長期熟成を通して生まれています。長期熟成をするには、力強い葡萄を栽培する必要があります。
— 最後になってきましたが、ご自分の造ったワインの楽しみ方、そして日本のワイン愛好家の皆さんにメッセージをお願いします。
Q:日本は、すばらしい食文化を持っていると思います。本当に素晴らしくて、美味しい料理がたくさんあります。だからワインと料理のマリアージュを考えるのは難しくないはずです。白とロゼは、夏楽しむのがいいでしょう。魚介類…例えばイカを調理したもの(イカの肉詰め)や貝類、あとは鳥のグリルと相性がいいと思います。赤は、冬に楽しむのがいいですよね。私は、暖炉で牛肉や豚のほほ肉を焼きながら、楽しんでいます。
— 果たして、日本人にワインを理解することは可能なのでしょうか?
Q:日本人は食材に対する造詣が深いので、ワインを充分に理解しうるのではないでしょうか。むしろ、ワインは日本人の傍にあったんですよ。ただ、ワインというものを今まで忘れていたにすぎないんじゃないかな。
— キノネロさん、あなたにとってワインとは何ですか?
Q:人生そのものです。そうですね…、生きがい、生き方、そしてかけがえのないもの…
— 本日は、ありがとうございました。太陽を思わせる赤い花「ガランス」をドメーヌ名に持つキノネロのワイン。彼自身も太陽のように熱くエネルギッシュ、それでいて優しい。そんな彼が手掛けるワインを大自然のなかで傾けたい…そう思わせるインタビューでした。